2009年06月09日

APS競技とスポーツ

一般にスポーツの世界では「心」「技」「体」のどれが欠けても良い結果は残せないと言われている。私も道具を使わないスポーツに関しては全くその通りだと思う。もちろん道具を使うスポーツにおいても多くの部分で当てはまると言えるだろう。ただ道具を使うスポーツは「心」「技」「体」だけで結果が残せるのだろうか?

「道具を使う」スポーツとはいったい何なのか?スポーツという以上主体は当然「人」である・・・が道具を使う以上その結果には「道具」のファクターも含まれる。ただ大抵の道具を使うスポーツではルールとして道具の仕様が厳密に定められている。これは結果に対する「道具」のファクターを出来るだけ少なくしスポーツとして「人」の能力の優劣を決めるためである。

ここでAPSという競技について考えてみる。APSとは何か?・・・「遊戯銃を使った射撃競技」大抵の人はこう答えるだろう。私もこの意見に異論はない。ではAPSとはスポーツなのか?主催者である日本エアスポーツガン協会(以下JASG)はAPS競技をスポーツとして定義し、社会的にもそれが定着することを望んでいる。だが、ここで問題にしたいのはJASGがどう望むかではない。

APS競技をスポーツとして考えたとき、結果に対する道具(つまり銃)のファクターを出来るだけ少なくするためのルールが準備されているだろうか?過去に行われたAPSカップのレギュレーションブックを読む限り、その道具たる銃の規定はその影響が最小限になるように定められているようには私には思えない。これは私が考えるにAPS競技自体が「遊戯銃という趣味の道具を使用し、参加者の大部分を遊技銃趣味を持つ人が占める」というところを出発点にしているために、遊技銃趣味の大きな要素(つまり改造、カスタム、ドレスアップ等)を完全には排除できなかったことが原因だろう。また、この事と参加者のAPS競技に対するスタンスの違いが原因で、レギュレーションに対する不公平感を持つ人もいるがその事についてはいずれ書きたいと思っている。

ではAPS競技は純粋に銃の性能だけを競う競技なのか?それも否である。完全(この世に完全と言うものが存在するかは別にして)に銃を固定して撃つ訳ではないし、APSカップに出場された事のある諸氏ならわかると思うが、いくら銃をカスタムしてもそれだけで好成績を収める事はできないからである。

こう考えてくるとAPS競技はスポーツとして純粋に「人」の能力の優劣を競うのでもなければ、純粋に「銃」だけの性能の優劣を競そうのでもない。では何を競うのか?私が思うに『「人」が精密射撃に賭ける全て』つまり「総合力」なのではないかと。「心」「技」「体」はもちろん、その為に割く時間や空間の確保、より良い道具を創り出す能力やそれを手に入れる財力、より好成績を収めるための情報やそれを正しく判断するための能力など、人が持てる全てを競う競技なのではないかと思う。そしてそれら全てが高次元でバランスしたときに初めて勝利(または目標達成)を掴めるのではないかと。

仮にAPS競技を『「人」が精密射撃に持てる「総合力」』を競う競技だとしたら、どこに力を入れるかも競技のうちである。練習に力を入れる者もいれば、データ解析に力を入れる者、または改造やカスタムに力を入れる者もいるだろう。力点の置き方は人それぞれである。たとえ次々と新しい銃を買いそろえるのもその者の自由である。よく人に対して「誰某は銃ばっか新しいの買いやがって・・・」とか言う人がいるが、「総合力」を競う競技であるならば、より良い道具を用意するのも競技のうち、他人がどうこう言う筋合いの問題ではない。結局はより良い道具を用意できなかった者の言い訳でしかない。

また、「総合力」を競う競技だとしたら、当然練習だけでは補えない部分にも力を入れざるを得ないだろう。練習だけでは補えない部分を補おうと思ったら人は何を考えるだろうか?おそらくそれはより良い道具(銃)を手に入れる(買ったり自らカスタムする)ことだろう。私もそう思うし、実際にそうしてきている。つまり最後は金である。ただ金で全てが解決すると言う意味ではない。一点差とかXカウント差で負けたくないと思うから、その差を埋めるために金をかけると言うことである。ただその効果があるかどうかは金のかけ方次第であるし、それよりもその分練習に費やした方がよほど効果的であるということは言うまでもない。

つまり私が言いたいのは、そこに掛ける財力も競技のうちであると言う事。競技に勝つ(またはマスターバッジ等の目標に到達する)ためにAPSをやっているのであれば、自己鍛錬で目標を達成しようが、金で目標を達成しようが結果が全てである。

最後に、この記事は某氏に対するアンチテーゼであるとともに自分への戒めの言葉である。


タグ :APS雑記戯言

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Posted by Mr.Seven at 21:28│Comments(2)雑記
この記事へのコメント
Mr.Sevenさん、はじめまして。

内容には概ね賛同します。

APSカップで結果を残すための手段は複数存在しており、規定内であれば手段は自由であるべきです。

ありがたいことに近年十分な性能を持ったAPS銃が登場してきてるので、多額の費用をかけたカスタムガンに、ほぼノーマルガンでも負けないようになってきました。

私が最も欲しいのは自宅で10m練習できる環境ですが、貧乏人の私には残念ながら実現困難な問題です。
Posted by MAGI at 2009年06月10日 19:53
MAGIさん、はじめまして
貴重なデータを公開してくださるので、いつも参考にさせていただいております。

>規定内であれば手段は自由であるべき
私もMAGIさんと同意見です。
だた人のやる事をとやかく言う輩がいるので、身の程をわきまえずに意見を述べさせていただきました。

>多額の費用をかけたカスタムガンに、ほぼノーマルガンでも負けない
おっしゃるとおりですね。
お恥ずかしい話ですが、私もいわゆるカスタムガンを購入し使っていました。各所のバランスを見直しながらパーツを変えていったら、最終的には結局ほぼノーマルな銃になってしまいました。そんな事からこの記事は自分への戒めでもあるのです。

>自宅で10m練習できる環境
APSをやっている人にとっては渇望する環境ですね。我が家もウサギ小屋どころかネズミ小屋といったところなので、私にとっても練習場所の確保は命題です。
Posted by Mr.Seven at 2009年06月11日 00:41
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